株主代表訴訟とは?事例や制度の概要・流れ、対策まで徹底解説

昨今、大企業の役員などが不祥事を起こしたことに対して、株主が株主代表訴訟を提起したというようなニュースを聞いたことがある人も多いでしょう。近年、それぞれの企業の株主に企業のステークホルダーとしての意識が高まっており、株主代表訴訟が目立っている状況です。
経営者の中には、株主代表訴訟が大企業でのみ問題となることだと考えている方もいますが、中小企業であっても同訴訟を提起されるリスクは当然にあります。
そこで、本記事では、株主代表訴訟の制度の概要・流れ、具体歴な事例、そして、株主代表訴訟の対象から企業側の対策までわかりやすく解説します。
株主代表訴訟とは
株主代表訴訟の概要
株主代表訴訟(英語:Stockholders’ Representative Action)とは、個々の株主が、自ら会社のために役員の会社に対する責任を追及する訴訟のことです。
株主代表訴訟の特徴は、株主が役員に対して自身が有している債権を行使するのではなく、会社が役員に対して有している債権(損害賠償請求権等)を株主が会社に代わって行使することができるという点です。
本来は、会社が役員に対して責任を追及するべきですが、役員同士の仲間意識などから会社が役員に対する責任追及を怠ることも多々あります。そこで、会社や株主の利益の回復・確保を図るため、株主が実質的に会社の代表的地位に立って、責任を追及する訴訟が認められているのです。。
役員が負う責任の種類
株主代表訴訟は役員等に対して責任追及するための訴訟です。
そして、役員等が負う責任には、会社に対する責任と第三者に対する責任の2種類があります。
会社に対する責任
役員は会社から経営を任されている立場であり、主に以下のような義務を負っています。
- 忠実義務(会社法第355条)
- 競業避止義務(会社法第356条)
- 善管注意義務(会社法第330条、民法第644条)
- 利益相反取引の制限(会社法第356条)
- 監視・監督義務(会社法第362条2項)
役員がこれらの義務を果たさずに会社に対して金銭面や信用面などで損害を与えた場合、株主代表訴訟で責任を問われる可能性があります。
取締役が会社に対して注意義務を負っていることを前提に、会社に対して損害賠償責任を負う可能性があるケースは、例えば以下のような場合です。
- 役員の任務を怠った場合(任務懈怠責任、会社法第423条)
- 競業取引をした場合
- 利益相反取引をした場合
- 株主に対して利益供与をした場合
- 分配可能額を超えて剰余金を配当した場合
- 出資の履行が適法になされなかった場合
第三者に対する責任
役員は、会社以外の者に対しても損害賠償責任を負うことがあります(会社法第429条)。具体例を挙げると、以下に対する責任です。
- 粉飾決算で損害を受けた株主(会社法第462条、金融商品取引法第24条の4など)
- 代金を支払えなくなった取引先
- ハラスメント被害者
会社法の第429条によると、「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う」と規定されています。
会社法第429条に基づく責任が認められるための要件は、以下のとおりです。
- 役員がその職務を行うについて任務懈怠(義務違反)があったこと
- 役員に悪意又は重大な過失があったこと
- 第三者に損害が生じたこと
- 役員の任務懈怠と第三者の損害に因果関係があること
上記の規定は実務上、倒産した会社の債権者が会社の取締役に対して責任を追及し、債権回収を図るために使われることが多いです。
株主代表訴訟の対象
株主代表訴訟の対象としては、行為主体及び対象となる権利の観点から、以下のように分けることができます。
- 行為主体:会社の役員
- 対象となる権利:任務懈怠に基づく損害賠償請求権、取引債権
行為主体としての「役員等」
会社の役員とは、具体的には、「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人」(会社法423条)のことを言います。
これらの者のことを総称して会社の「役員等」と呼びます。
対象となる権利①「任務懈怠に基づく損害賠償請求権」
会社法第423条によると、役員等が任務(善管注意義務・忠実義務等)を怠り、その結果、会社に損害が発生した場合には、任務懈怠に基づく損害賠償請求権が発生します。
取締役をはじめとする役員等には、すべての法令を遵守し職務を執行する義務が課されています(会社法第355条)。したがって、法令に違反する行為をした場合は任務を怠ったことになると考えられています。
具体的には、以下のような場合には取締役が任務を怠ったと判断されることがあります。
- 多額の投資をしたが失敗した場合(経営判断の失敗)
- 会社と同じ事業を同一地域で行った場合(競業避止義務違反)
- 会社の所有する土地を廉価で購入した場合(利益相反行為)
- 取締役の債務を保証する場合(利益相反行為)
対象となる権利②「取引債権」
取引債権は、役員側から言い換えると、会社に対する取引債務のことになります。具体的には、取引が無効である場合の不当利得返還債務、解除された場合の原状回復義務等が含まれます。
株主代表訴訟の事例
株主代表訴訟には様々な事例があります。そこで、以下では、代表的な事例をいくつか紹介します。
事例1.アパマンショップHD株主代表訴訟事件
平成18年(2006年)5月頃、アパマンショップHD(A社)の取締役らは、アパマンショップマンスリー(B社)を完全子会社とする決定を行いました。
この決定に伴い、B社で行った株式買取または株式交換の対価が不当に高額であり、A社の取締役には善管注意義務違反があるとして、A社の株主が取締役らに対して善管注意義務違反による損害賠償を請求しました。
平成22年(2010年)7月15日、最高裁判所は、株式買取価格決定についての善管注意義務違反を認めず、A社取締役の責任を否定しました。
この最高裁判決において、経営上の専門的判断については、決定の過程および決定の内
容に著しく不合理な点がない場合には、取締役としての善管注意義務違反がないという審査基準が定立されました。また、この判決は、後ほど紹介する「経営判断の原則」を明確にした画期的な判決とされています。
事例2.大和銀行株主代表訴訟
平成7年(1995年)に発覚した大和銀行ニューヨーク支店の巨額損失事件を巡り、同行の株主が当時の取締役ら49人に対して、損失した約11億ドルと捜査当局に支払った罰金など3億5,000万ドルの総額14億5,000万ドル(約1,550億円)を賠償するよう求めました。
平成12年(2000年)9月20日、大阪地方裁判所は株主側の訴えを一部認めて、元役員や現役員らに対してそれぞれ賠償金の支払いを命じました。
裁判所は、元行員が約11億円の損失を出したことに対する管理責任について「大和銀行ニューヨーク支店の証券保管残高の確認方法が、著しく適切さを欠いていた」と指摘し、「元行員の不正の機会を与える結果になった」と判断しています。
そして、当時のニューヨーク支店長だった取締役にのみ「保管残高の確認を極めて不適切な方法で行い、適切な方法に改めなかった点で、任務を果たしていなかった責任がある」とし、不正行為を発見または防ぐ責任を認めて踏み込んだ判断をしました。
また、アメリカでの司法取引で有罪を認めて罰金を払ったことについては、当時の取締役11人に「法令に違反してアメリカでの報告を怠ったのは不適切な経営判断」として、それぞれの責任の度合いに応じて計約2億4,500万ドルを連帯して支払うよう命じました。
事例3.神戸製鋼所株主代表訴訟
神戸製鋼所の株主は、取締役が総会屋に対する利益供与に関与したこと及び裏金の捻出に関与したことについて、上記行為に直接関与した取締役に加えて、代表取締役に対する責任も追及する株主代表訴訟を提起しています。
平成14年(2002年)4月5日、神戸地方裁判所は裏金の捻出および社外流出がなされ、あるいは長きにわたり利益供与行為が継続されていたにもかかわらず早期に有効なその防止管理体制を構築できなかったことについて、取締役に経営トップとしての責任を認めて、3億1,000万円を会社に支払うことで和解が成立しています。
神戸地方裁判所は「神戸製鋼所のような大企業の場合、職務の分担が進んでいるため、ほかの取締役や従業員全員の動静を正確に把握することは事実上不可能である。そのため取締役は、商法上固く禁じられている利益供与のような違法行為はもとより、大会社における厳格な企業会計規制をないがしろにする裏金捻出などの行為が社内で行われないよう、内部統制システムを構築すべき法律上の義務がある」旨を述べています。
事例4.ダスキン株主代表訴訟
ダスキンは、傘下のミスタードーナツが無認可の添加物を含む商品を販売したことの隠蔽工作を行っており、このことについて、ダスキンの株主が、取締役・監査役の責任を追及する株主代表訴訟を提起しています。
裁判所は、担当の取締役に対して「仮に販売を中止し、混入を公表しても信用回復のため一定の出費を要した」として、約53億4,000万円の支払いを命じる判決を下しました。
また、隠ぺいに関与していない取締役・監査役11名に対しても、連帯して約5億6,000万円の損害賠償責任を認める判決を下しています。
不祥事の隠ぺいに積極的に関与しなかった取締役についても「自ら積極的には公表しない」という方針を採り、消費者やマスコミの反応をも視野に入れたうえで積極的な損害回避の方策の検討を怠った点において、善管注意義務違反があるとして責任を認めています。
事例5.みずほ銀行株主代表訴訟
みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)および同社の子会社みずほ銀行(みずほBK)が、同行系列信販会社であるオリエントコーポレーション(オリコ)との提携ローンにより暴力団員ら反社会的勢力に対して融資を行っていた問題についての株主代表訴訟です。
この株主代表訴訟では、平成26年(2014年)3月28日付で東京地方裁判所に訴状を提出し、みずほFGおよびみずほBKが金融庁から業務改善命令を受けたことなどによってみずほFGが被った損害について、認識した当該反社会的勢力との取引を解消するために具体的な措置を講じるよう求める義務を負っていたにもかかわらず、これを怠ったという善管注意義務違反があるとして、当時のみずほFG役員らに対して計約16億7,000万円の損害賠償を求めました。
これに対して、令和2年(2020年)に東京地方裁判所は、「原告の主張であるみずほFGの取締役は、新たに反社会的勢力との取引が発生することを防止するための体制を構築する義務を怠ったという点を否定し、みずほBKに対して認識した反社会的勢力との取引を解消するために具体的な措置を講じるよう求める義務までは負っていない」として請求を棄却しています。
株主代表訴訟の流れ
株主代表訴訟を提起するにはどのような手続きを踏めばよいのでしょうか。
株主代表訴訟の具体的な手順は大きく5つのステップに分けることができます。
提訴前の準備
株主代表訴訟では、6カ月以上にわたり株主代表訴訟の対象となる会社の株式を保有する株主が、会社に対して不祥事などを起こして会社に損害を与えた役員等の責任を追及してもらいたい旨を請求します(会社法第847条1項)。
なお、「会社に対して」とは、会社の監査役に対してとなります(会社法第386条1項1号、同条2項1号参照)。
監査役がこの請求の日から60日以内に会社が何らかの対策を講じなかった場合、上記の旨を請求した株主は株主代表訴訟を提起できるようになります(会社法第847条3項)。
裁判所への提訴
株主は、裁判所に対して株主代表訴訟を提起します。
株主代表訴訟は、会社の本店所在地の地方裁判所に提起しなければなりません(会社法第848条)。
訴訟手数料の納付
株主が、裁判所に対して訴訟にかかる手数料(民事訴訟費用等に関する法律第4条2項参照)を納付します。
訴訟の告知
株主代表訴訟を提起する株主は、対象となる会社に対して、訴訟することの告知を行わなければなりません(会社法第849条3項)。
会社の訴訟関与
会社が株主からの提訴請求に応じず、株主が株主代表訴訟を提起した場合、訴訟の原告は株主で、被告は役員等になります。
会社は判決の効力を受けるものの(民事訴訟法第115条1項2号)、株主代表訴訟の手続そのものには関与しません。
しかし、会社の意思決定に関連して株主代表訴訟が提起されている場合に、被告側である役員等に加勢し、意思決定の正当性を訴訟の場で明らかにすることを会社が望むケースもあります。このようなケースでは、会社は被告側である役員等に補助参加することが認められています(会社法第849条1項)。
ただし、取締役や執行役等の側に会社が補助参加する場合、監査役等の同意が必要となる点に注意が必要です(会社法第849条3項)。
判決
裁判所において審議が尽くされると、判決が下されます。
原告である株主側が勝訴した場合、株主側は賠償金を受け取ることはできず、会社側に支払うことを要求することのみが可能です。ただし、株主側は、株主代表訴訟にかかった費用(調査費用など)や弁護士への報酬について、会社側に請求することが可能です(会社法第852条1項、3項)。
これに対して、原告である株主側が敗訴した場合、仮に悪意を持って株主代表訴訟を起こした株主側が敗訴すれば、会社に対して損害賠償を支払う責任を負います。
なお、場合によっては、株主代表訴訟を提起する株主側と訴えられる役員側でなれあいが生じる可能性も想定されます。これを防止するために、会社法第849条1項では「他の株主又は株式会社による訴訟参加」、会社法853条では「再審の訴え」がそれぞれ認められています。
株主代表訴訟における紛争解決方法
株主代表訴訟における紛争解決方法としては、和解と判決の2種類があります。
以下、それぞれの内容や留意点を順番に解説します。
和解
和解による場合、会社も当事者として参加することができるため、会社と株主間で同時に紛争を解決することが可能です。
ただし、和解による場合でも、会社が当事者として参加しないときは、裁判所は会社に対して和解された内容を通知し、かつその和解に異議があれば2週間以内に述べる旨を催告しなければなりません(会社法第850条2項)。
そして、会社がその期間内に書面をもって異議を述べなかった場合、上記による通知の内容をもって株主が和解をしたことを承認したものとみなされます(会社法第850条3項)。
これは、当事者間の和解を自由に認めると、内容によっては会社の利益が害される恐れがあるためです。したがって、和解が認められるのは会社が和解の当事者となっている場合や所定の手続きにより会社に承認した場合に限られるとされています(会社法第850条1項)。
判決
裁判所の判決による場合、当事者及び裁判所は判決の主文内容に拘束されます。また、判決の効力は会社にも及ぶことになります。
そのため、いったん判決が出た場合には、判決の主文内容を前提として、上訴したり、手続きを進めたりする必要があります。
株主代表訴訟リスクへの対策・対応
株主代表訴訟のリスクに対しては、その事前および事後について会社側ではさまざまな対策・対応が求められます。
そこで、以下では、株主代表訴訟のリスクへの対策・対応を、訴訟の提起前・提起時・提起後に分けてそれぞれ順番に取り上げます。
株主代表訴訟の提起前の対策
株主代表訴訟の提起前に会社側で講じられる対策としては、以下のようなものがあります。
経営判断原則を考慮した意思決定
取締役などの役員等は、会社経営のスペシャリストとして、経営に関する様々な意思決定を下すことになります。そこで、役員等の機動的な経営判断を尊重し確保するために、一定の要件を満たす経営判断については、原則として善管注意義務の責任を負わないとされています(経営判断原則)。
経営判断原則が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 経営の意思決定のために、十分な情報を集めていること
- 様々な選択肢を検討して、意思決定を行っていること
- 意思決定においては、会社の意思決定機関や外部弁護士等の専門家の意見を聞く等、適切な手続を行っていること
内部統制システム・リスク管理体制の構築
役員等は、会社に対して、内部統制システムを構築・運営する義務を負います。すなわち、役員等は社内のリスク管理体制を構築し、自分の担当業務だけでなく他の役員の担当業務を相互に監視する責任があり、従業員の違法行為を防止するための法令遵守体制を確立する義務があるのです。
役員の責任の免除・限定
会社法には、役員の責任を免除・限定するための制度がいくつかあります。
そのうち、事前の対応として責任限定契約を活用することができます。
責任限定契約とは、役員が任務懈怠について重過失がないという要件を満たす場合、会社に対する損害賠償責任が一定の額に制限されるとする制度です(会社法第427条)。
これは、業務を執行しない役員に重い責任を課すと、役員のなり手がいなくなるとの考えから生まれた制度です。
会社役員賠償責任保険
会社役員賠償責任保険(D&O保険)は、役員が責任追及を受けたときのリスクをヘッジする方法として活用できるものです。
これによると、役員としての業務遂行に起因して損害賠償請求がなされた場合に、当該損害が保険期間中の総支払限度額(保険金の最高限度額)の範囲内で支払われることになります。
会社役員賠償責任保険の代表的な補償内容としては、以下のものがあげられます。
- 損害賠償金:役員等が負う法律上の損害賠償金
- 争訟費用:役員等に対する損害賠償請求に関する争訟によって生じた費用で、保険会社の同意を得て支出したもの
- 会社訴訟補償:記名法人またはその子会社からなされた損害賠償請求により役員等が被った損害
- 初期・訴訟対応費用補償:役員等または会社が初期対応、訴訟対応するにあたって保険会社が認めた費用
- 会社補償:D&O保険によって保険金を支払うべき損害において、会社が法律、契約または定款等に基づいて適法に役員等に対して補償を行ったことにより、会社が被る損失
- 会社有価証券賠償責任補償:会社の有価証券の売買もしくは募集等において法令もしくは証券取引所の規則に違反したとの申し立てに基づいてなされた損害賠償請求により会社が被る損失
- 雇用慣行損害賠償請求:不当行為や第三者ハラスメントに起因する損害
- 先行行為補償:初年度契約の始期日より前に役員等によって行われた行為に起因する損害
- 被保険者間訴訟補償特約:他の役員等からなされた損害賠償請求により役員等が被った損失
- 第三者委員会設置費用:会社が第三者委員会を設置した場合に、会社が負担した所定の費用
この保険を活用する場合、会社を保険契約者、全役員を被保険者として、保険会社と契約します。
一部の役員のみを被保険者にすることは許されず、役員が個人的に保険契約を締結することもできない点に注意しましょう。退任した役員や役員死亡後の相続人への責任追及なども考慮し、これらの人も被保険者とみなされるよう設計されています。
被保険者には、執行役員等の重要な使用人や子会社役員等も加えることが可能です。ただし、契約内容自体や特約の有無によってカバーされる損害の範囲が異なるほか、特に違法行為による取締役の損害賠償責任はたいてい補償の対象外ですので、熟慮のうえで契約することが求められます。
会社役員賠償責任保険では補償されないことがあるのは、例えば以下のような事由・行為に起因する損害賠償請求です。
- 役員等が私的な利益または便宜の供与を違法に得たこと
- 役員等の犯罪行為
- 法令に違反することを役員等が認識しながら行った行為
- 役員等に報酬または賞与等が違法に支払われたこと
- 役員等が公表されていない情報を利用して、株式、社債等の売買等を行ったこと
- 身体の障害または精神的苦痛
- 財産の滅失、き損、汚損、紛失または盗難
- 会社または役員等が他人に対して有償で行う専門的業務の遂行に過誤があったとの申し立て
株主代表訴訟に対する担保の請求
株主が会社を害する目的で株主代表訴訟を提起することもあります。
この場合、後ほど会社側は当該株主に対して損害賠償請求をすることができます。
また、会社側としては、株主が上記目的を有するか否かを確認するために、株主に対して相応の担保を請求することが望ましいです(会社法第847条の4第2項、3項)。
法令に沿った経営・コンプライアンスの順守
株主代表訴訟を提起されれば、それに対応せざるを得ず、役員に経済的・精神的な負担がかかることは間違いありません。
そこでまず肝心なのは、株主代表訴訟を提起されないような経営環境を作ることです。
きちんと取締役会、株主総会を開催して合意の上で経営を行うほか、取締役会・株主総会の議事録や計算書類等の書類をきちんと作成・保存し、法律に基づいて請求があれば閲覧させるなどの配慮が必要でしょう。
不祥事発生に対する誠実な姿勢
会社および役員側の不祥事発生時の誠実な対応が、株主代表訴訟を抑止することにつながるとも考えられます。
例えば、リコール問題が発生した際、顧客の目線に立った速やかな情報提供や、記者会見での誠実な対応などが、株主代表訴訟を避けるために有効な対策の1つになります。
株主代表訴訟の提起時の対応
株主代表訴訟の提起時に会社側で講じられる対応としては4つ考えられます。
専門家との速やかな協議
株主代表訴訟の対応を誤れば、会社と役員にも甚大な悪影響を及ぼします。そのうえ、多くの会社と役員にとって、株主代表訴訟はほとんど馴染みがないため、事態発生時には速やかに専門の弁護士と相談し、対応を進めていきましょう。
証拠書類等の保存
株主代表訴訟の対象となっている問題に関する証拠書類や記録などは、確実に保管してください。 役員自身や会社にとって都合の悪いものを隠したり廃棄したりすれば、訴訟の際に会社が著しい不利益を被ります。
会社の補助参加
株主代表訴訟においては、会社の訴訟参加が広く認められています。これは、原被告間での馴合訴訟の展開を防止するための制度です。
なお、会社が被告取締役等の側へ補助参加するためには、監査役(監査役設置株式会社の場合。委員会設置株式会社では監査委員)全員の同意が必要です(会社法第849条3項)。
危機管理の広報の大切さ
会社で不祥事が発生した場合、適切なタイミングで記者会見を開催したり、Webサイトで公式にアナウンスを行ったりして、誠実に対応を進める意思があることを世間に理解してもらうことが大切です。
株主代表訴訟の終了後の対応
会社としては、株主代表訴訟の結果にかかわらず、役員による不正行為等の存在やその疑いがあったと認められる場合、その再発防止策を策定・実施することを検討しなければなりません。
また、株主代表訴訟は会社が行うべき訴訟を株主が代わりに行うものです。そのため、訴訟終了後は株主と会社との間で一定の処理を行うことが望ましいです。
例えば、株主が勝訴(一部勝訴の場合を含む)した場合には、株主は会社に対して、株主代表訴訟に関して支出した必要費用(調査費用、通信費など)や弁護費用の内で相当と認められる額の支払いを求めることが認められており、会社としては株主の当該請求に対応する必要があります。
株主代表訴訟の濫用等を防止する制度
株主代表訴訟の濫用等を防止する制度として、訴えの却下と担保提供命令があります。
訴えの却下
株主代表訴訟が当該株主もしくは第三者の不正な利益を図り、また当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、株主は提訴請求や株主代表訴訟を提起できません。
上記の場合以外でも、株主代表訴訟の提起が訴権の濫用に該当する場合は、会社は裁判所に対して訴え却下を求めることが可能です(民事訴訟法第847条1項ただし書)。
株主代表訴訟の濫用は役員および会社に対する不法行為となり得ます。被告の役員は不法行為を構成するような濫訴に対しては、その旨を明確に指摘し、反訴として不法行為による損害賠償請求をすることで、株主側に対して強力な反撃を加えることが可能です。
担保提供命令
株主代表訴訟の被告である役員は、原告の株主が「会社を害する目的」で株主代表訴訟を提起したことを疎明し、原告株主に担保を提供させるよう裁判所に対して申し立てることが可能です(会社法第847条の4第2項、3項)。
この担保は、原告株主の不法行為責任が認められた際、その賠償金支払いの担保となるものであるため、被告取締役による担保提供の要求は不法行為責任の追及とあいまって濫訴原告に対する強力な反撃となります。
まとめ
これまでに株主代表訴訟の事例は多く報告されており、有名企業・大企業の事例も少なくありません。株主代表訴訟が提起された際は、訴訟に対する対応以外にも、会社としてはさまざまな対応に追われます。企業の信頼を回復するためにも、専門家である弁護士と連携しながら適切な対応をすることが求められます。


