少数株主(敵対的少数株主)にお困りではありませんか?少数株主の排除・凍結方法!

少数株主(敵対的少数株主)にお困りではありませんか?少数株主の排除・凍結方法!

事業承継やM&Aを検討するうえで、少数株主の存在に悩んでいる経営者の方は多いです。創業時に、相続税対策などで親族や当時の従業員に株式を分散させたものの、時が経つにつれ、疎遠または険悪な仲になってしまうケースがよくあります。

この記事では、事業承継などで後継者に自社株式を集中させる方法や、少数株式を集約するための具体的な方法、少数株式の買取価格や集約のタイミングなどについて解説します。少数株主の排除を考えているのであれば、ぜひ参考にしてください。

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少数株主対策(少数株主の排除・凍結)がなぜ必要か

少数株主であっても一定の権利が保障されているため、事業承継やM&Aにあたって、会社に対して敵対的な少数株主が存在していると、大きな障害となります。

会社法では、大株主や経営陣の意向が会社方針に反映されすぎないよう、少数株主に対しても一定の権利を認めています。たとえば、1株しか株を持っていなくても行使できる「単独株主権」には、取締役に対する違法行為差止請求権などがあります。ほかにも、一定の割合以上に株式を持っている株主に対しては、株主総会の議題提案権なども認められています。

また、株主であれば、株主総会開催時には招集通知を受け取り、事業報告などを通じて会社の経営状況を知ることもできます。つまり、自らに不利益が生じる可能性がある事柄への請求権や、会社に対して知る権利など、株主としての権利を会社に対して行使できるのです。

このような権利をもつ少数株主が、会社に対して敵対的である場合、事業承継やM&Aにおいて大きな障害となってしまいます。中小・零細企業では、少数株主は基本的に身内であることが多いです。オーナーが子どもに事業承継をしたいと思っても、そのような面倒な少数株主がいると、子どものほうでも事業承継をためらいます。M&Aも同様です。

そのため、事業承継やM&Aを検討している場合、事前に少数株主をうまく排除しておくことが非常に重要となります。

後継者に経営権を集中させる(少数株主対策(少数株主の排除・凍結))ための3つの方法

事業承継やM&Aにおいて、後継者に経営権を集中させるために取りたい対策として、次の3つが考えられます。

A)先代経営者がもつ自社株を、後継者に集中

B)ほかの相続人には、議決権のない株式を分配

C)少数株式の集約

A)先代経営者がもつ自社株を後継者に集中

事業承継にあたって、後継者がもつ自社株の割合は多ければ多いほどよいため、株式譲渡や贈与、相続などによって、後継者に自社株を集中させておくことが重要です。

株式譲渡や贈与を利用する場合

株式譲渡では、先代経営者が後継者に、有償で株式を譲渡します。先代経営者は株式を現金化できるメリットはありますが(譲渡所得税はかかる)、後継者には買取資金が必要です。これに対して、贈与では、先代経営者が後継者に、無償で株式を譲渡します。先代経営者は対価を受け取れませんが、後継者には贈与税のみ負担すればよいというメリットがあります。

株式譲渡や贈与を利用する場合は、次のふたつの手続きが必要です。

  • 株式譲渡契約書の作成
  • 取締役会ないし株主総会で、株式譲渡についての承認を得る

相続を利用する場合

相続(遺言)を利用する場合には遺留分への対策が必要となるため、後継者に自社株を集中する方法としては、株式譲渡や贈与を利用するのがよいでしょう。

遺留分とは簡単にいうと、相続でもらえることが保障されている、一定割合の遺産です。後継者に自社株を全て相続させると、兄弟などほかの相続人の遺留分を侵害した結果、先代の死後に後継者がほかの相続人から高額な金銭を請求される恐れがあります。

このような遺留分の問題への対処法として挙げられるのが、「遺留分に関する民法の特例」の活用です。具体的には、自社株などを遺留分が算定される対象から除く制度となります。しかし、その実現のためには、ほかの相続人の合意、裁判所の許可、経済産業大臣への申請など、複数の手続きが必要なのが難点です。

持株会社(ホールディングス)を利用する場合

後継者に自社株を集中させる方法として、株式譲渡や贈与、相続のほかに、持株会社(ホールディングス)のスキームを利用する方法もあります。

持株会社(ホールディングス)とは、ほかの株式会社の株式を保有するための会社です。後継者が設立した持株会社が、集中化させたい既存会社の株式を買い取ることで、既存会社の株式を後継者に集中させます。具体的には次の流れになります。

  1. 後継者の出資により、持株会社を設立
  2. 持株会社は金融機関からの融資により、既存の会社から先代経営者の株式を買い取る
  3. 持株会社は、買い取った株式の配当を原資として、金融機関に融資を返済

持株会社のスキームを利用するメリットは、大きくふたつあります。ひとつは、集中させたい自社株を後継者自身が引き継ぐのではなく、持株会社が取得するので、相続に該当せず遺留分の問題が発生しない点です。もうひとつは、先代経営者が持株会社に株式譲渡する形になり、現金を取得できる点です。デメリットとしては、先代経営者は譲渡取得税がかかる点、後継者は金融機関への融資返済が必要になる点が挙げられます。

B)ほかの相続人には、議決権のない株式を分配

前述した民法特例において、ほかの相続人の合意が得られずに、後継人以外に自社株が分配されてしまう場合にも対策はあります。自社株を、議決権のある株式・ない株式に分け、後継者以外の相続人には議決権のない株式を分配する方法です。株式に議決権がなければ、経営に大きな妨げは生じません。自社株を議決権のない株式にするためには、株主総会を開いて会社の定款を変更する必要があります。

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C)少数株式を集約(排除・凍結)するための具体的な方法

事業承継などにおいて、後継者に経営権を集中させるための3つ目の方法が、少数株式の集約です。具体的には、次のふたつの方法が挙げられます。

C-1)任意交渉

C-2)スクイーズアウト

C-1)任意交渉

散らばってしまった少数株式を集約するには、少数株主たちと交渉して、売買などにより株式を任意で取得する方法があります。株式を手放すことや売買金額について、相手となる株主と交渉して承諾を得ることが必要です。譲渡制限株式を売買する場合には、株式譲渡について、株主総会や取締役会などで承認を得る必要があるなど、手続き上の制限があることに注意しましょう。

少数株主と確執がある場合、先代経営者が自力で交渉にあたるのは困難です。しかし、弁護士などの第三者が介入すれば、相手も感情にとらわれず冷静に交渉できることもあります。また、過去に交渉を断られたケースでも、少数株主の高齢化により、株式の現金化ニーズが進むなど、想定外に交渉が進むこともあります。

C-2)スクイーズアウト

スクイーズアウト(締め出し)」とは、大株主が少数株主に対して、承諾を得なくとも、金銭その他の財産を対価として支払うことで会社から排除する方法です。スクイーズアウトのうち、少数株主が保有する株式すべてを、金銭を支払うことで承諾を得ずに取得することを「キャッシュアウト」といいます。

スクイーズアウトは、少数株主の承諾を得ないで会社から締め出すため、少数株主との紛争が生じやすい方法です。後述する3つの具体的な方法はいずれも、反対株主による株式買取請求権や株式買取価格決定申立など、少数株主の保護を守る制度が存在するため、少数株主が裁判や訴訟を提起する恐れがあります。

さらに、買取価格が交渉で決まらない場合には、裁判所が決める株式価格に従いますが、DCF法など企業の継続を前提とした株式評価方法を利用することが多いため、買取価格が想定より高額になる傾向があります。

そのため、少額株式の集約においては、まずは任意交渉で可能な限り買い集め、それがどうしても難しい場合にスクイーズアウトを検討するのがよいでしょう。

スクイーズアウトには、主に次の方法があります。

  • 特別支配株主の株式等売渡請求
  • 株式併合
  • 全部取得条項付種類株式
  • 株式交換

平成26年に会社法が改正されてから、スクイーズアウトにおいて次の流れが見られるように変化しています。

  • 公開買付で90%以上の株式を取得できれば「特別支配株主の株式等売渡請求」を利用
  • できなければ「株式併合」を利用

特別支配株主の株式等売渡請求

総株主がもつ議決権の90%以上を有する「特別支配株主」である場合は、少数株主に対して、すべての株式を売り渡すよう請求できる「特別支配株主の株式等売渡請求」を利用できます。

この制度は、対象会社での取締役会決議によって発動が可能で、株主総会での決議が必要ないため、最短で20日程度と非常に短期間で実施できる点が特徴です。さらに、残りふたつの方法に比べて、1株未満の株式における端数を処理する必要もありません。

株式併合

平成26年の会社法改正以降は、有する株式が90%未満であれば「株式併合」を利用するのが一般的になってきています。

株式併合とは、10株を1株、100株を1株など、複数の株式を1株に統合することで、既に発行されている株式の数を減らすことです。この制度を利用して、少数株主の株式が1株未満になるような比率で株式併合を行い、端数となった株式に対して代金を支払って少数株主から買い取ることで、スクイーズアウトを実施するのが株式併合を利用したスキームとなります。

株式併合には株主総会での特別決議が必要なため、この方法を実施するには、3分の2以上の議決権を有していることが条件です。

株式交換

また、会社が他社の株式をすべて取得して100%子会社化する制度として株式交換という制度があり、会社は株式交換の際に他社の株主に対して株式を取得する代わりに現金を交付する現金対価株式交換という制度を利用して、対象会社の少数株主の株式をすべて親会社が取得してしまうことで、スクイーズアウトを実施するのが株式交換を利用したスキームとなります。この場合、株式を取得するのは会社でなくてはならず、個人は株式交換をすることはできませんが、子会社となる対象会社の少数株主に対して、現金を交付することにより、スクイーズアウトが可能です。

株式交換についても、株主総会での特別決議が必要なため、この方法を実施するには、3分の2以上の議決権を有していることが条件です。

参考:全部取得条項付種類株式

平成26年の会社法改正以前は、「全部取得条項付種類株式」を利用したスキームがよく使われていました。この方法は、スクイーズアウト利用のために設計された制度が設計ではないため、次のような複雑な流れになっています。

  1. 種類株式発行会社になるため定款変更(株主総会での特別決議)
  2. 普通株式を全部取得条項付種類株式に変更するため定款変更(株主総会での特別決議)
  3. 全部取得条項付種類株式を取得(株主総会での特別決議)
  4. 3の対価として、少数株主に新たな種類株式を交付するが、比率が1株未満になるように設計
  5. 1株未満の株式を会社が買い取る

株主総会での特別決議が3つ必要となりますが、1回の株主総会で実施できると考えます。

まず、種類株式発行会社(2つ以上の異なる株式を発行する会社)となるために、定款を変更します。次に、これまで発行していた普通株式に、全部取得条項という要件を付加して、全部取得条項付種類株式に変更します。全部取得条項とは、株主総会での特別決議を得れば、会社が全ての株式を取得できるという条項です。

そして、その全部取得条項を発動させて、会社が全ての株式を取得します。その対価として、少数株主に新たな種類株式を交付しますが、あらかじめ少数株主の比率が1株未満になるように設計をしておくのです。株主は1株未満の株式を保有できないため、自動的に会社が買い取ることとなり、少数株主を排除できるという流れになります。

この方法も株式併合と同じく、3分の2以上の株式を保有していれば利用できるため、90%以上の株式を持っていない場合に使われる方法です。

小括

スクイーズアウトには、ここで紹介しただけでも3つの方法がありますが、それぞれ要件やメリット・デメリットが異なります。具体的な実行の際には、弁護士などの専門家に相談して、適切な方法を選択する必要があるでしょう。

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少数株式の集約(排除・凍結)において知っておきたい株式の種類

少数株式を集約するうえで知っておきたいのが、名義株と黄金株です。

名義株とは

名義株とは、株主名薄に記載されている株主と、株式の購入資金を払った出資者が異なる株式です。名義株を実際にだれが持っているのかが不明な名義株は、事業承継やM&Aの手続きに支障をきたしかねません。

さらに、名義株主(名義上の株主)と実質株主(実際の出資者)の片方または両方が亡くなり、名義貸しの事情を知らない相続人が名義株を相続すると、問題はより複雑化します。名義株主の相続人が、自らを実際の株主と誤解して権利を主張する恐れなどもあります。

名義株を解消するには、名義株主が協力的な場合とそうでない場合、また名義株主と連絡自体が取れない場合とでは、それぞれ方法が異なります。名義株主が協力的な場合は、実質株主と共同で、株主名薄の書き換えを会社に請求してもらえば、名義を名義株主から実質株主へと変更可能です。

名義株主が協力的でない場合には、訴訟によって株主名薄の書き換えを命じる判決を取得するか、前述したスクイーズアウトによって強制的に名義株を取得する方法があります。さらに、名義株主と連絡すら取れない場合には、訴訟やスクイーズアウトに加えて、「所在不明株主の株式売却制度」の利用も可能です。この制度は、5年以上、発送した通知などが到達しない、または配当を受け取らない株主の株式を、強制的に買い取りできます。

黄金株とは

黄金株とは、取締役会や株主総会で決議される事項に対して、拒否権をもつ種類株式です。どんな決議事項に対して拒否権を持つかは、事前に定めることができます。英語で「golden share」というため、直訳して黄金株と呼ばれています。

黄金株は、たとえば事業承継において、先代経営者が後継者に株式を譲渡するけれど、1株だけ拒否権がついた黄金株を残しておいて、経営方針などをコントロールできるようにしておくといったシーンなどで活用されます。

デメリットとしては、黄金株を不合理な理由などで乱発すると、会社の経営に支障をきたしてしまう点が考えられます。そのため、先代経営者が加齢により判断能力を失ってしまう場合などに備えて、一定期間後は会社が強制的に買い取りできるなどの取得条項を定めておいたほうがよいでしょう。

また、後継者が株式を相続などで引き継いだとき、相続税などの納税を猶予してもらえる「事業承継税制」は、黄金株を後継者以外の者が保有している場合には使えないというデメリットもあります。そのため、事業承継税制を活用したいのなら、黄金株は利用しないか、税制活用前に普通株式への転換などを考えておくことが必要です。

少数株式の買取価格

スクイーズアウトにおいて、少数株主から株式を買い取る価格は、どのように設定すべきでしょうか。前述した具体的な3つの方法には、少数株主の権利を保護する制度が存在するため、適切な価格を提示しないと、裁判などの紛争に発展する恐れがあります。

株式の買取価格は、税理士や公認会計士、金融機関などに算定を依頼するケースが多いですが、もし裁判などを起こされても勝訴できるよう、独立した第三者の算定機関による株価算定書を入手するなど、もしもの事態に備えておいたほうがよいでしょう。

スクイーズアウトにおける株価の評価方法については、様々な方法が用いられます。税務上における株式の評価方法よりも、企業の継続を前提として株式を評価するDCF法など、高めに買取価格が算定される評価方法が用いられる傾向があります。そのため、買取価格の算定が高額になり過ぎないよう、株価対策の必要があるかもしれません。

少数株式をいつ集約(排除・凍結)するか

少数株式をいつ集約するか、タイミングには特に注意が必要です。

スクイーズアウトは強行的な方法のため、少数株主から裁判などを起こされるリスクが存在します。当事務所など専門家に依頼して、適切な株式買取価格を設定できれば、裁判の結果自体を恐れる必要はありませんが、半年程度のロスが発生してしまいます。

裁判や訴訟の最中は、事業承継やM&Aを実施できません。そのため、少数株式の集約を行う際には、裁判などに半年程度を要する可能性を加味して、スタート時期を早めに設定することが重要です。

まとめ

少数株主における一定の権利は、会社法で保障されているため、会社に敵対的な少数株主が存在する場合、事業承継やM&Aに支障が出かねません。

事業承継において後継者に経営権を集中させるには、株式譲渡や贈与、持株会社スキームなどによって後継者に自社株を集中させ、ほかの相続人には議決権のない株式を分配といった方法があります。

加えて、少数株式の集約方法として挙げられるのは、任意交渉とスクイーズアウトのふたつです。スクイーズアウトの具体的な方法としては、平成26年の会社法改正以降は、90%以上の株式を保有しているなら「特別支配株主の株式等売渡請求」、90%未満なら「株式併合」を活用する傾向があります。会社法改正以前は、「全部取得条項付種類株式」も活用されていました。

少数株主を排除するためにどのような方法を選択するか、買取価格やタイミングをどうするか、考えるうえで専門的知識は必須となります。敵対的な少数株主に悩まされている経営者の方、少数株主の排除に精通している当事務所にぜひご相談ください。

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